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教育トレンド

 「自己肯定感」を育てる家庭教育の大切さ

■生活体験と自己肯定感              
「生活体験や家庭での手伝いなどの経験の多い子どもほど、自己肯定感が高い」という調査結果が発表となった。これは「青少年の体験活動に関する実態調査」で国立青少年教育振興機構の調査である。日本の子どもたちが内向きで、自己肯定感が低いということが、各種の調査で浮き彫りになっているが、この調査では、自己肯定感という重要な人格の基礎基盤について調査が行われた。
調査は二〇一五(平成二十七年)年二月から三月にかけて全国の公立の小学一年生から三年生の保護者と、小学校4年生から六年生の児童とその保護者、中学二年生と高校二年生の生徒を対象に実施したもので、回答は子ども一万八千三十一人、保護者一万五千八百五十四人から回答を得たものである。
調査結果をまず、四つのポイントで外観した。
■4つのポイント
1) 自然体験や生活体験、お手伝いといった体験が豊富な子ども、生活習慣が身についている子どもほど、自己肯定感、道徳観、正義感が高くなる傾向がある。
2) 同様に保護者がしつけに力をいれている家庭ほど、自己肯定感、道徳観、正義感が高くなる傾向がある。
3) お手伝いをよくしている子ども・生活習慣が身についている子どもは、携帯電話やスマートファオンを操作することが少ない傾向にある。
4) 子どもにかける教委費用が高い家庭に子どもが自然体験を多くしている傾向がみられる。生活体験やお手伝いと教育費用の関係はほとんどみられない。
■自己肯定感は年代とともに減退
この生活体験、自然体験の豊富な子どもや、生活習慣が身についている子どもほど「今の自分が好きだ」「体力には自信がある」といった自己肯定感や道徳観、正義感が高くなっている。
しかし、この自己肯定感は、学年が上がるに従って低くなり、小学校から中学校にかけて著しく低下する傾向がみられる。中でも、「勉強は得意な方だ」「今の自分が好きだ」にはその傾向が顕著に表れている。「自分には、自分らしさがある」「今の自分が好きだ」などの質問に、「そう思う」と回答した自己肯定感が高い(「高い」と「やや高い」の合計、以下同じ)と思われる子どもの割合は、小学校四年が六一.四%、小学校五年が五七.三%、小学校六年が五四.九%、中学二年が三二.八%、高校二年が二七.六%で、学年が上がるにつれて、自己肯定感が高い子どもの割合が減っている。
特に小六と中二では約二二ポイントもの差があり、小学生から中学生になると自己肯定感が大きく下がるのが特徴である。これは、小学校から中学校に進み、環境の変化や発達段階の状態といったことも関係するであろう。この変化が速やかに進行するような教育指導が必須と言われるゆえんである。
また、この時期は、家庭での支援活動が重要となる。
子どもが小学校から中学校へ移行する時期は、ちょうど初等教育から中等教育に移行する時期でもある。この期間の精神発達から見ると、子どもの体験の質の変化、子どもどうしの交流の変化、教師交流の変化などが子どもの心身に大きく影響するので、家庭でのしっかりとした教育体制が必要なのである。
 ■教育費用との関連は?
また、子どもの教育費用の高い家庭ほど、子どもが携帯電話やスマートファオンを所有している割合が高くなっている傾向がある。この利用時間は、学年が上がるに従って『三時間以上利用』の割合が高くなり、高校生になると一日五時間以上の利用が五割を超えるようになる。何をしているかとの問いでは「特にすることがない時に携帯電話やスマートフォンを操作している」「というのが最も多く九割近くがやることがないときに操作しているという結果である。
■中学校で「保健」の授業を実施せず
この稿を執筆している最中、テレビで東京・東村山市の市立東村山第三中学校で、「保健」の授業を二年以上行っていなかったとして教育委員会の委員が頭をさげているニュースが放映された。文部科学省によると、同中学校では、少なくとも二年以上にわたり「保健」の授業が行われていなかったという。
現行の国の学習指導要領には、中学の三年間で、「保健体育」のうち身体の機能の発育や発達、薬物の危険や健康に関する取り組み、思春期の心身の発達や、喫煙・飲酒などが健康を損なう原因になることなどを学ぶ「保健」の授業を四十八コマ程度行うよう定められているが、同中学校は、二年間にわたり実施していなかったのだ。その理由として教育委員が言っていたのは
「一〇年ほど前、学校が荒れて大変だったため、保健の授業ではなく身体を動かす体育の授業を行うようになった。学校は落ち着いたが、授業は再開されずに今まできてしまった」との説明をしている。
別の情報によれば二年間ではなく一〇年間ほど全く授業をしていなかったというのである。
 学校の荒廃の応急処置として、机の前に座っていなければならない授業ではなく、比較的生徒がまとまりやすい体育の授業にあてた、というのが実情であろう。荒廃した学級や学校では、授業自体することが困難を極めるという実態を筆者も体験しているので、その時の現場対応としてはやむない選択ではあったろうと推察するのだが、そういった、学校の荒廃を招くものはなんだろうか?と根本的な問題を喚起すれば中学生の前段階までの教育に、その資質を見ることができる。つまり、子どもが精神的に荒れてくると、まず学級が荒廃して学校が荒廃するという循環に陥る。
学校が有意義で友人たちと成長し学べる場であれば、好循環を招くのであるが、それを支えるのは、健全な子どもであることなのであって、子どもが健全でいられるのは家庭での精神的な充足感をもって育てられているかにかかる。つまりは然体験や生活体験、お手伝いといった体験が豊富な子どもや生活習慣が身についている子どもほど、自己肯定感が高い、ということにつながるのである。家庭での兄弟や親と過ごす時間、体験や、基本的な生活習慣を確立できているかどうかが、子どものその後の生活を決めていく、という当たり前の事実が根底にあるのだ。
■コミュニケーション能力
さかのぼれば育児の世界で、この頃注意を喚起されているのが「サイレントベビー」の問題である。赤ん坊は泣くことで意思表示するものだが、面倒だからと赤ん坊にスマホの映像やゲームを見せて放置しているなどで周囲がコミュニケーションを取らずにいると反応しない赤ん坊になる、というものである。ひいては親子間の信頼も築けず、集団生活になじめないような子どもになりがちなのだという。自己表現もできない大学生がいかに多くなったことだろうと嘆息するが、元を辿れば、家庭でのお手伝いもせずにあまやかされて過ごした結果でもあるだろう。
家庭では発達段階に合わせて家庭の中での子どもの役割をあたえ、家庭人の一員としてのお手伝いをさせるといった当然のことが、心身の発達にきわめて重要なことである。高校生にもなって「することがないから」と一日五時間以上もゲームや無駄話、ネットサーフィンなどでスマートフォンを操作しているようなことでは決して良い結果にはならない。
改めて、人間の教育の根本である家庭生活、家庭教育の重要さをつくづくと感じたことである。(了)

 


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