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教育調査・分析

過去記事 2010年

平成20年度の学校基本調査

平成20年の学校基本調査(速報)を概観する

このたび、文部科学省から発表になった平成20年学校基本調査(速報)。
少子化、大学生き残りなどの話題も多く聞かれる昨今、過去最低記録などがいくつかあった。日本の学校がどうなっているか、いくつかの観点でまとめてみた。

日本にどれくらい学校があるか。幼・小・中・高・大で、約48,000校だ。
高等教育機関の大学は、それも著名大学は首都圏に集中する傾向がある。
しかし近年の少子化で首都圏中心だった大学が、関西にキャンパスをおくことや、その反対に関西拠点の大学が東京キャンパスをおく、など生徒獲得競争は激化している。

では在学児童・生徒数はどうだろうか。幼稚園,小学校,中学校,高等学校ではすべて減少した。
幼稚園は約168万人、小学校では約712万人、中学は約359万人だ。

小学校,中学校での児童・生徒数は過去最低を記録で、小学校では、昭和57年から27年間連続して減少し続けている。 少子化を背景にしており、学校の統廃合も進む中この傾向は今後も避けられないだろう。

そのような中、中等教育学校,特別支援学校では生徒数は増加している。
中等学校とは、1998年(平成10年)の学校教育法改正により、新たに定められた校種である。中学校と似ている名前だが、違 う種類の学校だ。日本においては、中学校と高等学校の段階で行なう修業年限は6年間。例えば国立では東京大学教育学部 附属中等教育学校、公立では、東京都立小石川中等教育学校などがある。

6年間という年月で教育を受けられるので高校入試に影響を受けることなく、系統的・計画的に学習を進められるという大きな 特徴があるという。つまり、入学して6年後の大学進学が最終的な大きな目標、カリキュラムも無駄なく効率的に組み立てることができるため、 近年、中等教育学校の進学実績は話題となっているものだ。

長期欠席者とは、継続して学校に30日以上登校しない状態をいう。一時的に登校しない場合は含まれないものだ。その分類の中に、「不登校」がある。これは、初めは1950年代から報告され、「学校嫌い」や、1960年代頃からは「登校拒否」とも呼ばれ、その後変遷して現在の「不登校」と呼ばれるようになった。
この不登校者の数は、小学校で2万4千人、中学校では、10万5千人と、ともに増加している。

高等学校の進学率は、ほぼ全員が進学しているといっても過言ではない。
高校進学率は戦後上昇を続け、1974年度(昭和49年度)に90%の大台を超え、上昇し続けた。

今年度調べでは、97.8パーセントで過去最高となった。ほとんどの中学卒業者は高校に進学をしている。しかし、学校不適応問題などが起こり、中途退学や不登校問題が多発しているのが現状である。

以上の詳細を数字で以下に列挙してみる。

<幼小学校・中学校・高等学校等の数>
幼稚園 13,626校
小学校 22,476校
中学校 10,915校
高等学校 5,242校
中等教育学校 37校
特別支援学校 1,026校
高等専門学校 64校
短期大学 417校
大学 765校
専修学校 1,584校

幼小中高の児童・生徒の在学者数

幼稚園,小学校,中学校,高等学校ではすべて減少した。

幼稚園の園児数は、167万4千人で前年度より3万1千人減少している。
小学校の児童数は712万2千人で、前年度より1万1千人減少した。
中学校の生徒数は359万2千人で前年度より2万2千人減少で、過去最となった。
高等学校(全日制・定時制)の生徒数は336万6千人で前年度より4万人減少した。
中等教育学校の生徒数は1万8千人で、前年度より3千人増加した。
特別支援学校の幼児・児童・生徒数は11万2千人(前年度より4千人増加)で過去最高となった。


不登校の児童・生徒は小中高合計で12万9,000人

平成19年度間の長期欠席者(30日以上の欠席者)の中で「不登校」を理由とする児童・生徒数は、小中高の合計で2,000人 増加の12万9千人となった。

長期欠席者のみを見ると、平成19年度間の長期欠席者数は,小学校6万人(前年度間より1千人減少。対前年度比1.4パーセント減少している。


まとめ

  • 中学校では13万9千人で、前年度間より3千人増加、対前年度比2.5パーセント増加だった。
  • 中等教育学校では177で、前年度間より25人増加している。 これは対前年度比16.4パーセン ト増加。

これらを合計して、19万9千人(前年度間より3千人増加。対前年度比1.3パーセント増加だった。
長期欠席の中で、「不登校」を理由とする児童生徒数は,小学校2万4千人で前年度間より101人増加している。これは、対前年度比0.4パーセント増加だった。
中学校では、10万5千人で前年度間より2千人増加し、これは対前年度比2.2パーセント増加となっている。
中等教育学校131人(前年度間より23人増加。対前年度比21.3パーセント増)の合計12万9千人(前年度間より2千人増加。対前年度比1.9パーセント増加となっている。


高等学校進学率は、97.8%

日本の通信制課程を含む高等学校等進学率は97.8パーセントで過去最高となった。
また、大学等進学率(現役)は52.9パーセント(中等教育学校(後期課程)卒業者を含む)でこれも過去最高となった。

まとめ

〔中学校卒業者〕
  • 平成20年3月の中学校卒業者数は119万9千人(前年より1万4千人減少)。
〔高等学校卒業者〕
  • 平成20年3月の高等学校卒業者数は108万8千人(前年より5万9千人減少)。
  • 大学等(大学学部,短期大学本科,大学・短期大学の通信教育部,大学・短期大学の別科,高等学校専攻科,特別支援学校高等部専攻科)への進学率(中等教育学校(後期課程)卒業者を含まず。)は52.8パーセント(前年より1.6ポイント上昇)で過去最高。

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学校外教育費用

過日文部科学省から発表になった「学校外教育費用」では、家計に占める学習費用の総額が分かる。それによると、世帯年収が低い家庭では、学校外教育費用も低いという傾向が出ている。
例えば、年収が400万円未満の家庭であれば公立小学校に通学している子どもへの費用は二十三万一千円だが、年収が千二百万円である家庭では、四十八万八千円と二倍にもなっている。

学校外教育費用とは、塾や習いごとなど、家庭がお金をだして負担する子どもの教育に関する出費のことである。 世界的な不況の中、家庭の経済状況は落ち込み、保護者が失職したり減給になったりということが起きている。そして、今まで「聖域」とまで言われた教育費用が、影響を受けているという。
歴史的な政権政権交替で、民主党が、月額二万六千円の子ども手当を支給するというマニュフェストが期待されて、今の話題であるが、この実現も二月上旬現在で、与党内で原資の捻出の調整もとれず峰崎直樹財務副大臣は1日の記者会見で二〇一一年度からの子ども手当(月額二万六千円)の満額支給について、「今の段階か『できません』とは言えないが、財源は厳しい。個人的には、相当、無理があると思っている」と述べた。
野田佳彦財務副大臣も「困難だ」との認識を示しているなど、与党内の足並みもそろわずにいる。
子ども手当という現実的金銭の支給が、本当に役立つならよいが、家庭の経済レベルによっては教育費用に回らず生活費用に回ったり、また反対に高所得層であれば貯蓄するという層もでるだろうとの予測もたつ。
各家庭に手当という名目で支出をするのではなく、例えば、中学段階の子どもの教育にかかる費用を無償にする、などの措置はとれないものだろうか。
学校では、修学旅行や遠足に行くとするとそのための積立をするとか、教材費用であるとか、月々に家庭から徴収する金銭がある。まず、義務教育の段階で、そういった費用を行政がしきゅうするような形をとるなど、先にやるべきことがあるのではないだろうか、と思われる。

◊GDPに占める公的教育支出は低い◊

子どもの教育が、お金で左右されている日本であるが、世界的にみると、経済協力開発機構(OECD)が昨年、加盟国の〇六年国内総生産(GDP)に占める教育費の公財政支出割合では、参加二十八カ国中、日本は3・3%で下から二番目だ。
日本は、下位低迷が続き、支出割合は一九九二年以降ほとんど変わらない。この他、幼稚園や大学といった年代の家庭負担も国際的に大きい。
因みに加盟国の対GDP比平均は四・九%で、1位はアイスランドの七・二%、次いでデンマーク、スウェーデンと続き、北欧各国が上位を占めている。
公的支出を教育段階別に見ると、日本は小中高までの初等中等教育は二・六%で下から三番目で、大学などの高等教育は〇・五%と各国平均一%の半分で最下位である。
全教育費に占める私費負担の割合は三三・三%と韓国に次いで二番目に高く、平均の二倍以上となっている。

2010年2月5日

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過去記事

子どもの学力低下要因は、
ゆとり教育導入による影響との指摘が約7割

国内最大級のインターネットアンケート・サービス「gooリサーチ」を共同で提供するNTTレゾナント株式会社(本社:東京都千代田区)と株式会社三菱総合研究所(本社:東京都千代田区、)は、「gooリサーチ」登録モニターの中で、子どもを持つ回答者を対象に「子どもの学力状況」に関する意識調査を実施しました。

有効回答者数1,736名のうち43.9%が自分の子ども時代の学力と比較して、学力低下傾向にあると指摘している一方で、約半数の47.7%が低下していないと回答しており、両者二分する結果となりました。子どもの学力低下の主な理由として「ゆとり教育の導入による影響」が65.6%と最も高く、次いで「学習内容の質低下(48.3%)」、「教師の質低下(44.2%)」と続き、保護者側の意識としては教育制度上の問題、学校における授業内容及び指導者における質低下等の課題があると感じていることが分かりました。また、ゆとり教育導入の問題点として「学習内容の削減」、「授業時間数の削減」など、学習量の減少に対する指摘が共に7割以上と圧倒的に多く、さらに今後の教育制度に対する要望として、「学習内容の見直し(61.2%)」、「教員の質の向上(53.5%)」について多くの回答者が求めていることから、学習量の見直し及び精度向上に向けた取り組みへの期待が感じられます。

調査の結果

有効回答者数1,736名のうち65.6%の回答者が子どもの学力低下の主な理由として、「ゆとり教育の導入による影響」を挙げる人が最も多く、次いで「学習内容の質低下」、「教師の質低下」と続いています。また、指摘の多いゆとり教育導入の具体的問題点としては、「学習内容の削減」、「授業時間数の削減」など、学習量の減少に対する回答がともに7割以上と多くを占めております。さらに今後の教育制度に対する保護者の期待として、「学習内容の見直し」、「教員の質の向上」が挙げられており、ゆとり教育のあり方及び学習量の見直しや学習の質の向上に向けて、総合的な観点で子どもの学力向上に向けた施策の検討が求められていることがうかがえます。

また、家計費における教育費については、各支出の中で最も負担が多いと感じてはいるものの、学力低下防止のために学習塾や通信教育等の外部教育機関の利用が相対的に高いこと、今後の学力低下対応策としての教育費支出意向について、9割以上が支出に対して前向きな姿勢を示していることから、教育産業界にとっては、現時点における学校の教育制度等の課題を補完していく位置づけとして、今後学力の維持向上につながる質の高いサービスの提供が競争優位の鍵となることが予想されます。

調査結果のポイント

(1) 世帯年収は500〜600万円が14.5%と最も高く、全体の7割以上が家計のゆとりのなさを指摘。家計負担を強いられる主な費用は、住宅関連費用、教育費がともに約6割と上位。

家計のゆとり状況について、7割以上の回答者に余裕がないとのネガティブな回答を示しており、余裕のある層は2割程度に留まった。家計で負担が大きいと指摘されているものとして、住宅関連費用(ローン等含む)、教育費が約6割とほぼ同率上位を占めており、負担の大きさを顕著に示す結果となった。

(2) 子どもの学力低下要因はゆとり教育導入との指摘が約7割と圧倒的に高く、問題点として「学習内容の削減」、「授業時間数の削減」など学習量減少に関する指摘が圧倒的に多い。

子どもの学力が低下した、もしくは低下する理由について、ゆとり教育の導入に対する指摘が65.6%と最も多く、次いで学習内容の質の低下が約半数を占めた。教師の質の低下に関する指摘も4割以上と高く、教育制度上の問題及び学校における授業内容、教師の質の低下が問題と感じられている実態が浮き彫りとなった。また、ゆとり教育導入の問題点として、「学習内容の削減」、「授業時間数の削減」など、学習量の減少に関する指摘が圧倒的に多い。

(3) 学力低下の対応策としての今後の教育費支出の意向は、9割が前向き。学校教育制度への期待は、「学習内容の見直し」が最も多く、次いで「教員の質の向上」。

学力低下に対する対応策としての今後の教育費の支出意向は、9割以上の大多数が支出に前向きで、子どもの学力向上に向けた親の強い意志が表れた結果となった。また、学校教育制度に対する今後の期待として、「学習内容の見直し(61.2%)」、「教員の質の向上(53.5%)」が半数を超え、上位を占めている。

<調査概要>
  1. 調査対象: 「gooリサーチ」登録モニターより子どもを持つ親を抽出
  2. 調査方法: 非公開型インターネットアンケート
  3. 調査期間: 平成18年6月23日(金)〜平成18年6月27日(火)
  4. 有効回答者数:1,736名
  • 【性別】:男性45.2%、女性54.8%
  • 【年代】:20代3.2%、30代34.0%、40代35.4%、50代26.4%、60代以上0.9%
  • 【回答者の子どもの学齢(第一子)】:小学生38.8%、中学生19.6%、高校生(高専)・予備校19.5%、大学・短大・専門学校24.5%、その他0.5%

< gooリサーチとは>  http://research.goo.ne.jp/
ポータルサイト「goo」を運営するNTTレゾナントと、日本のリーディングシンクタンクである三菱総研の調査企画力、コンサルティング力が融合した、高品質で付加価値の高いインターネットリサーチ・サービス

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新学習指導要領が前倒しでスタート

文部科学省は新しい学習指導要領を当初予定より2年繰り上げ、今学期から実施することにした。

ここに、1970年代から約30年続いていたゆとり教育を脱却する形となった。新学習指導要領は、小学校は2011年から、中学校は2012年を予定していたが、前倒しで実施となった。

学習指導要領は、10年に一度改定するものだが、この前倒しは学力低下が社会的問題ともいうべき事態になって、公教育の充実を早期に強化しようということが大きな狙いである。

直前の2002年(平成14年)から施行された学習指導要領は、学力低下批判を受けて2003年(平成15年)に一部改正(指導要領の位置付けを「最低基準」へと変更した)され指導要領の範囲を超える発展的内容を教えることを可能にした。

しかし2005年(平成17年)、当時の中山成彬文部科学大臣が中央教育審議会(文部科学相の諮問機関、「中教審」)に全面的見直しを要請したことで「学習指導

要領改訂」の流れが一気に加速したのである。その後、2007年(平成19年)10月30日、中教審は「審議のまとめ」(中間報告)を発表し、「ゆとり教育」の反省点に初めて触れ、「基礎・基本の習得」の強調がなされた、という経緯がある。

そもそも、ゆとり教育は、学習指導要領がそれまでの詰め込み教育や知識偏重教育、過度の受験競争などを生んでいたとの反省から出てきたはずなのだが、結果、学力低下という問題に突き当たってしまい、ゆとり教育脱却となった。ゆとり教育の脱却で目指す教育とは、また、本来の教育はどうあるべきか私見をのべてみたい。

新しい学習指導要領の内容

ゆとり教育で昭和50年代の改定以来、減り続けてきた授業時間は、今回の改定で増加することとなった。小学校の授業時数は6年間で現行より278時間増えて5645時間に、中学校は3年間で105時間増え3045時間となる。ゆとり教育の象徴でもあった「総合的な学習の時間」や中学の選択授業は削減されることとなった。そして国語、算数・数学、英語など主要教科の授業時間は小学校で約10%、中学で約12%増えることとなる。

また教科内容の難易度も上がる見込みである。変更内容を少々概観すると、小学校2年生で学ぶ"時刻の読み方"は1年生で学ぶ内容に、6年時の"立方体・直方体"は4年時に移行する。小学校算数の円周率につき、現行では「3.14を用いるが、目的に応じて3を用いてできる」とある規定は「3.14を用いる」に変更。「台形の面積の求め方」(小学校算数)や「イオン」(中学校理科)を復活する。
小学校5、6年生を対象に週1回英語の授業を必修化する。中学で学ぶ英単語数も900語から1200語程度に増やす。
道徳は教育再生会議が求めていた教科化は見送るが、小中ともに「道徳教育推進教師」を置き指導するよう強調。
また古文・漢文の音読(小学校国語)、そろばん(同算数)などの充実を明記。 また言語力を育成する活動を新設した。

基礎基本の充実を

学力低下とともに、公教育の危機的な状態は、日本の教育の土台が崩れさるような事態になりかかっていた。理数教育の衰退、国際的学力調査ではじりじりと順位は下降した。ゆとり教育を脱し、基礎基本をしっかりと育もうという今回の舵切りは当然といえば当然の帰結であろう。
小中学校という義務教育年代のレベルであれば、尊敬語を使えるというような美しい日本語を習得することや日本全国の県名を覚えること、基礎的な算数・数学レベルを確実にすることなどが、まず教えるべき事柄である。高校や大学の年代の発達段階であれば、自己の選択による学問への方向や選択活動がのぞめるが義務教育の年代で「自由に考えを述べよ」という選択肢で教育ができるとはおもえないからである。
今、学校や家庭がすべきは、その子どもの個性を見極めて興味・関心・意欲のむくところを見出して、望ましい生活習慣、学習習慣を醸成することである。
今回の改定で、特に注目すべきは、言語活動につき一定の指針を示していることである。
子供の発達段階に応じた日本語の習得を充実させることは望ましい人をつくることに等しい。美しい日本語を習得する、敬語などの用法を学ぶ、古今の名作に触れる、感動するなどのことは、学校で家庭で是が非でも、推進したいことの筆頭である。
東京都世田谷区の「日本語教育特区」では、平成19年度から、美しい日本語を全区の学校で導入し、教育の方向性を示す取り組みとして実行している。日本語の古典を学ぶことで"日本号の古典には心を引き寄せる吸引力があるという。

(2009年5月記)

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